PLAB2に合格した!2回目の挑戦は基準を20点以上も上回る高得点だった。とても嬉しい。誰かの役に立つといいので、私がやったことを記録しておこうと思う。
- PLAB2とは
- 1回目の挑戦
- 失敗の理由
- 2回目の挑戦
- 合格の理由
- 私のおすすめ
- Take Home Message
- 参考サイト
1. PLAB2とは
PLAB1、PLAB2は外国の大学を卒業した医師が受ける英国の医師国家試験で、IELTS 7.5 (各最低7)・PLAB1の筆記試験に合格した後に、PLAB2の受験ができる*。
PLAB2では、コミュニケーション能力、医学的・社会的マネジメント能力、そして実技が試される。英国医学生の身体診察・医療面接試験にマネジメントを加えたような試験だ。PLAB1の勉強は学生時代を彷彿とさせるものだったが、PLAB2の勉強は実際に働く上で非常に役立つコミュニケーションのあれこれを学ぶ良い機会になった。
制限時間内に医学的に必要な情報を得るのはもちろん、患者さん(役の役者さん)がこぼすヒントを拾いながら、気がかりやライフスタイルも勘案して方針を相談しながら決めることが標準であるところに、家庭医制度の浸透した国の医療を見た。怒った人、不要で有害な検査を強く要求する人、あまり多くを語らない人や治療を拒否する人への対応なども学んだのだが、これらの知識なく場当たり的に働いていた頃を思い出して真っ青になる。
- PLAB1,2は数年のうちに廃止されて、UKMLAという試験になるらしい
2. 1回目の挑戦
PLAB1は2020年3月に受験して、合格した。合格してすぐにPLAB2の予約をして、右も左もわからない状況から、手探りにネットで情報を集めた(残念ながらPLAB2向けの教科書は売っていない)。寮生のインド出身の友達にAspireという予備校の「ノート」(過去問集のようなものをPLAB界隈ではnotesという)をもらって、それとYoutubeの動画で勉強をして、時々ネットで知り合った受験生とオンラインで練習をしていた。
パンデミックのため予定がキャンセル→1ヶ月後に予約、という予期しない変更があったけど、大体5月から8月は1日1-2時間程度、8月から試験(9月)までの1ヶ月ははほぼ1日中勉強という感じだった。
一度目は残念ながら3点足りず不合格だった。
3. 失敗の理由
敗因は、(1)塾に行かなかったこと、(2)マネジメントを甘く見ていたこと、(3)練習不足、そして(4)悪運 だと思う。
3-1.予備校
Facebookのグループを見ていると、PLAB2準備コース(2-3週間にわたる塾みたいなもの)に参加した後に最低1ヶ月の自習を勧める人が多い印象だった。受験生の多くは、仕事を休んで、英語の練習も兼ねて半年くらいマンチェスターやロンドンに住んで通塾・受験をする人が多いようだ。ちょうどパンデミックが始まったばかりで、英国人がやっていると思われる予備校や模試は新規受付を中止していた。訛りの強い英語と文法的間違いの多い教科書で学ぶと英語力が落ちてしまいそうだという警戒があって、ピンとくる予備校がなかったので、独学を選んでしまった。ちなみに、<2回目の挑戦>に記載の予備校へ行った時は、授業後の自習期間6週間〜8週間が一番多いグループで、わずかながら2〜4週間の人もいた。後述するように、予備校は必ずしも必要ではないと考えているが、独学するにしても外せないポイントを押さえつつ方向性の確認のために何度か模試を受けるのが良いと思う。
3-2.マネジメント
マネジメントを甘く見ていた。医学生向けのTHE OSCE RIVISION GUIDEで勉強していたこと(問診や身体診察についてはよくまとまった本だがPLAB向けではない)、感じよく親身になって話せばそれで受かる試験だというネットの嘘を信じてしまったせいもある。対人スキル、問診力に加えてマネジメント(医学的・社会的)も三大評価項目の一つなので、絶対に甘く見てはいけなかったのに、独学の落とし穴でそれに気がつけなかった。
Interpersonal Skillsについては、Dr Aman Aroraの1日コミュニケーションコース(オンライン)を受講したのだけれど、これもまたInterpersonal Skillsを重要視しすぎてマネジメントが疎かになる原因となったと思う。
3-3.練習不足
練習が圧倒的に足りなかった。時々一緒に練習していたエジプト人のお医者さんも予備校に行ってない人で、二人とも何が大事なのかわかっていなかった(彼女も落ちた)。PLAB2は3人に1人が落ちる試験なのに英語力にあぐらをかいて練習を甘く見ていた。
3-4.運が悪かった
パンデミックが始まってからは、16ステーション中だいたい10ステーション+最低点以上を取れば合格、ということになっている。その日ごとに合格点や必要なステーションの数は変化するし、新規出題のステーションについては受験生の様子を伺うために結果にカウントされない。私の場合は点数にカウントされるのは13ステーションだった。返ってきた結果をみて、うまくできたと思われるステーションたちは実は新規出題で結果にカウントされないものだったと知った。あれがカウントされていれば合格したかもしれないのにとがっかりした。
4. 2回目の挑戦
心が折れてしまって、立ち直るのに時間がかかった。でも同じ轍は踏むまいとすがる思いで評判のいいコモンステーションというアカデミーに登録をした。
コモンステーション(CS)に対する不満は尽きない(以下CSへの悪口なので興味がない人は読み飛ばして欲しい)。何があっても絶対に返金されないお金を払った後に、不必要な多くの個人情報を抜き取られそれへの権利を放棄するという誓約書にサインさせられる。授業開始の数日前に「パンデミックのため授業は全てオンラインへ移行する。これは昨日決定した。」と講師から連絡があるのだが、訛りの強い英語で捲し立てるように話され、反論は一切許されない。Interpersonal Skillsを教えている講師とは思えない横暴である。実はパンデミックが始まってからずっとオンライン授業なのに、それを隠蔽している(CS運営の宿舎に泊まる人を確保するためだと思う)。同級生の中には、インドから高額な優先ビザで隔離期間を経てやってきて授業前日にオンライン移行を告げられた人や、in-person courseと聞かされていたからここを選んだ人、本国にコンピューターを置いてきてしまったためオンラインコースをスマホの小さい画面で受けなくてはならなかった人などがいて、皆強い不満を持っていた。授業は9時に始まり19時に終わるはずなのに絶対に21時までかかる、暴言・個人への集中攻撃がひどい、などの理由でかなり心身に悪影響だった。知り合いはパニック発作が出たといっていた。質問に答えられない受講生には、「タリバンにお前を殺させる」「今すぐタリバンをお前の元に派遣する、なぶり殺しにさせる」みたいに怒鳴るんだけど、アフガニスタンで同胞が殺されているのにそんな冗談が言えるんだなとびっくりした。シングルマザーやゲイの人々も我々と同じ人間なので同じように扱わなければならない、という話を何十分もかけて説明する様子にカルチャーショックも大きかった(講師や受講生の多くはムスリム。試験で模擬患者さんが性的指向を明らかにすると準備のできていないムスリムはあからさまに顔をしかめて落第するそうで、そのための数十分だったのだろう)。ムスリムの国の中にはゲイだと死刑になる国があることは知っていたけど、その雰囲気に直接触れるのはこれが初めてで、本当にしんどかった。
マネキンを使った実技の授業で予備校に行くことがあったのだが、それもまた非常に苦痛だった。Hammersmith & Circle line の最終駅まで、片道2時間以上かけて9時に間に合うように到着したのに授業は11時まで始まらないし、運営のスタッフが信じられないくらい無礼だった。日本人だからそう感じるのかと思ったが、出身地にかかわらずスタッフの無礼さに怒っている人をたくさん見た。しまいには最近のケース80問を(基準は不明だが)選択的に受験生に渡していることが判明して、優しいインド人のクラスメイトがPDFをくれたが講師への不信感と嫌悪はこの上ないレベルに達した。
また2回模試が実施されるのだが、講師の質が悪く試験の1週間前なのにできる点を全くacknowledgeしないで出来なかったことだけを並べ立てるような模擬患者(元受験生)や、スマホを見ていてこちらに集中していなかったくせにフィードバックで「アイコンタクトがない」というような模擬患者(元受験生)がいて、これを理由に(‘demoralising’)同級生の何人かは2回ある模試のうち1回しか行かなかったと言っていた。
フェイスブックでは時々CSへの批判を見かけるが、翌日には削除されている。どうもBlackmailが常套手段のようで、個人情報を多く握られている手前、受講生は削除せざるをえないようだ。唯一の利点とも言えるnotesは、全ての過去問が手に入る一方で(問題の再現性がかなり高い)、マネジメントがとても長いので、何が大事なのか自分で考えて「まとめ付箋」みたいな要点チェックリストを300ケースに作る必要がある。ちなみにこれだけ嫌な思いをしても、CS出身者の合格率はクラスメイトを見ていると50%切るくらいなので、これを読んだ人たちには是非とも別の予備校を選んで欲しい。
ともあれ、CSで過去問集のようなものを手に入れたので、あとはひたすらブラジル人の友達と練習をした。BTS 11時-2時, 5時-8/9時というのがいつものスケジュールで(ブラジル時間に合わせてスカイプ)、毎日6-7時間一緒に朝から晩まで練習をした。お昼休憩の3時間と夕食後の1時間を過去問を読み進める時間に充てた。勉強期間は12月の試験まで、約5週間だった。
5. 合格の理由
何が大事なのかわかっている友達とひたすら練習したのが良かったと思う。 一緒に練習していた3人のうち2人は一度試験に落ちた人たちで、皆勝手がわかっていた。私たちは実際の8分ではなく7分で練習した。練習の時はいつもPLAB2タイマーを使っていたので、本番のスタート音もとても馴染みあるものだったし、「いつも7分で終わらせていたので8分あれば大丈夫」と心に余裕があった。自信満々、というわけではなかったけれど、それなりに落ち着いて試験に臨めたと思う。
1回目でうまくできなかったマネジメントは、2回目に向けて、Diagnosis, Senior, Explanation, Admission, Referral, Medication, Intervention, Follow-up, Red flagsの流れを頭に叩き込んだ。(カウンセリングのケースではRed Flagsに辿り着く前にタイムオーバーになるので、Red FlagsはExplanationの後・Lifestyle modification/Medicationの前に話すとか、Follow-upの前にサポートグループについて言及するとか、ケースごとに時々流れを変える必要はあるけれど、2-3分で全てカバーするには自分なりの流れを持っていることが大事。) Be a safe doctorが重要なようなので、1回目の受験ではDr Aroraのアドバイス(「Seniorにいつも言及するのは得策でない」)に従ったけれど、2回目はDr Bose(後述)のアドバイス(「必ずSeniorに言及すること」)に従って、診断名→見落としがないようSeniorにも相談しますが→これはこういう病気で理由はこうで・・・ と流れに組み込んだ。脱水に対する補液、痛み止め、嘔気どめなど主訴や関連症状に対する症状緩和への介入も言及するのが大切なようなので、いつも忘れず伝えた(→脱水の程度に関する質問を最初の4分でしておくのも大事)。
結果は基準点を20点以上上回っていた。落としたステーションも、0.01, 0.17, 0.69点差で落ちていて、大きな失敗はなかったようなので、とても嬉しい。
6. 私のおすすめ
私が実際にやっていないことも含むけれど、信頼できる友人からの情報も合わせて私がおすすめするのは以下の通りである。日本の医学部を卒業した人は英国の制度に馴染みが薄いので、医学的知識以外にも、GPで出来ること・できないことやReferralの制度について学ぶ必要がある。
- 有料
- Dr Boseの模試
- 主にWhatsappでクチコミの営業をしているお医者さん。点数付きのかなり詳細なフィードバックをくれる。早口で本物の模擬患者さんのように話すし、かなり役に立つ模試を提供してくれる。初回は一般論の授業付きで、大切なポイントを押さえられる。たくさん予約するとその分割引もある。私も大変お世話になった。興味があればWhatsappで連絡してみてほしい:+44 7425 055579
- 友達にnotesを譲ってもらうなど何らかの方法で過去問集が手に入るなら、Dr Boseの模試(に加えて、マネキン・SIMMAN対策)だけでも十分合格レベルに達しそうな印象。
- 予備校
- 何らかのコースを受講するなら、Dr MO SOBHYの予備校が良いかもしれない。これは最近できた予備校で、PLAB界隈には珍しく、講師がとても親身で優しくて生徒想いらしい。彼のFacebookのページには、Dr Sobhyが子守りをしてくれたので合格したという報告や、高得点での合格の報告がたくさんある(でも一部は有償のコメントだとか)。彼のノートは簡潔で大事なことしか書いておらずとてもわかりやすい(私も確認した)し、CSと違って学校のSIMMANをいつでも使わせてくれるらしい。事情をよく知っている人によると、他の予備校と比べると比較できないほど良いが、宣伝を鵜呑みにしてはいけないとのこと。
- 上にCSの私見をだらだらと書いたが、同じくらい古い有名な別の予備校は受講生への罵倒がCSよりひどいと元受講生から聞いた。有名な古い予備校が4校あるが、どれも受講生からは悪い話しか聞かない。
- 最近はTelegramやFacebookを中心に活動している講師がたくさんいるので、Dr Sobhy以外にも、その中から自分にあう講師を見つけるのが良さそう。例えばDr Elseidyは有料・無料で簡潔なチェックリストを配布している。Dr Rabia Nurも良い講師で、100ケースのコースを運営していると聞いた。
- 他にもSIM MANやマネキンを使ったケースだけに焦点を当てた1日コースを運営している講師が何人かいるので、それを組み合わせると良いかもしれない。
- Oxford Handbook of General Practice:Referral Criteriaや治療方針、Red Flagsなどが簡潔にまとまっていて、とても役にたった。
- Dr Boseの模試
- 無料
- Dr Nigel Miranda 公開模試
- 私も1度公開模試を受けた。週1くらいのペースで無料公開模試・有料模試をやっている。彼はいいことしか言わないのでフィードバックは役に立たないと言う知り合いもいるが、CSで他人が罵倒されたり泣いたりするのに疲れていた私には彼の模試は安心して観ていられる癒しの時間だった。
- 模試の最後にチェックリストを配っていて、それが結構役に立つ。
- TelegramやFaebookのPLAB2のグループ
- いろんな公開模試の情報などを得たり練習相手を探したりするのに便利。時々、不正に出回っている他校のnotesや録画や有料ポッドキャストが手に入ることもある。私はあまり参加していなかったけど、友達は出来るだけ多くのグループに参加することを勧めていた。
- Dr Nigel Miranda 公開模試
- Youtube
- Geeky Medics : OSCEのチェックリストなども配布していてとても役に立つ。ただし実際のPLAB2はただの実技ではなく、問診+実技+マネジメントを8分で終わらせるタイプが非常に多いので、試験ではGeeky Medicsの早送りを実演しなければならないことに注意。
- Dr Aman Arora
- Hippocratix
- GPs behind closed doors :看護師のカウンセリングはそのままPLAB2に使えるものが多い(asthmaのfollow upなど)。医師のはPLAB2に使うには簡略化され過ぎているものが多いけれど、試験対策でない本物のコミュニケーションが観られてとても勉強になる。
- Communication skills for medical training (Uinversity of Nottingham)
7. Take Home Message
- インターネットの情報を鵜呑みにしてはいけない
- PLAB2界隈のネットの情報は驚くほど未発達だ。数年前に書かれた有名なブログが多くの被害を生み出しているし(私も騙された1人だしクラスメイトにも文句を言っている人が複数いた)、Facebookに時々上がっている合格報告は金銭授受のある元塾生が書いていることがある。FacebookやGoogle Reviewで評判の良い高額な予備校に登録する前に、その予備校に行ったことのある人から直接話を聞いた方が良いし、過度に楽観的な情報は信じてはいけない。この記事に書いたことも、数ヶ月のうちに古くなってしまうと思われるので、信頼できるソースから最新の情報を得ることが大事。
- 良い友達を見つけること
- 私の合格は同じ目標に向かって一緒に頑張ったブラジルのお医者さんたちのおかげといっても過言ではない。何を試されているのかきちんとわかっていて、適切なアドバイスをくれる、同じペースで頑張れる人と練習するべき。色んな文化の人と練習した方がいいというアドバイスもあるが、私は英国を目指す理由や価値観が似ているブラジルのお医者さん達だけとかなり過密なスケジュールで一定して練習して良かったなと思う。前述の7分タイマーもおすすめ。1対1でやっていると大事な点を見落とす可能性があるので、3-4人くらいのグループで練習するのが良いかもしれない。CSには強い不満があるけれど、CSを通してずっとコンタクトを取り続けたい言わば戦友に会えたのは不幸中の幸いだった。
- 医学知識も忘れずに
- 感じよければ受かる、というのは嘘で、NICE CKS、NHS、Patient、などをみて細かなマネジメントも勉強する必要がある(治療薬、副作用、使い方、referralのpathway、などに加えて、主な待機手術の後どのくらいで運転・職場復帰できるか等の知識)。GPとかA&Eというセッティングもマネジメントを決める上で非常に重要。Oxford Handbook of General Practiceもとても役に立った。ただ一回目の挑戦の私のように、知識を得ることに必死になって練習を怠っては本末転倒なので、時間がないなら練習を優先すべき。
- マネキンとSIM MANは「捨て問」じゃない
- ABCDEだけでしょうと思ってSIMMANの準備をしないで臨んだ1回目は、SIMMANの各項目で0や1を取ってしまった。GMCの公式文書にもある通り、マネキンには話しかけてはいけないが、SIMMANには話しかけなければならない。SIMMANさえ<平均どおり>できていれば合格していたので、2回目は結構準備をした。
落ちた反動から合格への想いが強すぎて、通知がくるはずの1週間は毎晩合格の夢を見ていた。大学受験や日本の医師国家試験でもこれほどの執着はなかったと思う。2回目のPLAB2が終わった日には、張り詰めた糸がプツッと切れたように、ホテルのベジタリアン・イングリッシュ・ブレックファストを食べながら涙が出てきたし、合格した日にもPASSの四文字においおい泣いた。ついに英国で働くためのスタートラインに立てる日がやってきた。合格してもこれからまたGMC登録とか卒論とか就活とか大変なことが色々待ち受けているけれど、とりあえず一旦2年越しの目標を達成できたことに安堵している。
7. Useful Websites
以下は1回試験に落ちた元受験生として同意できるアドバイスを記したサイト
Top Tips for Passing the PLAB2
11 High Power Tips to Pass your PLAB 2 Exam
追記
21/3/24: ご本人から許可を得たのでDr Boseの電話番号を追加しました
