1ヶ月も働くと病棟全体25人分の病状把握できるようになってきた。働き出した頃は皆と初めましてだったけれどそろそろ経過の長い人とは週単位のお付き合いなので知っている人と新しい人が混在するようになってきて覚えるのが簡単だ。
今日からはsupernumeraryでない普通の勤務で、いつもは5人でそれぞれ1つずつBay(病室のこと)を担当していたのに今日は3人で5つのBayを担当して大変だった。
他科へのReferralも多くて大変な日だったが、家族への病状説明を3人分して感謝されてやりがいのある日だった。患者さんやその家族は全体的に、研修医の私にも言葉を尽くして感謝してくれるし、外国人でアクセントのある私にも特段びっくりした様子を見せない。コンサルタントが忙しくて研修医しか捕まらないのを知っているからかもしれないし、友達がいう「NHSのスタッフは英国在住者にはヒーローだからね」ということの反映なのかもしれない。患者さんや家族の外国人慣れには未だに驚いてしまう。
月曜日には先週1週間ほとんど担当してた人が退院してご本人もすてきなひとだし家族(結構心配の強い家族だったので頻繁に連絡取っていた)にもとても感謝されて下っ端なりに役に立てて嬉しかった。検査オーダーなどは本当に雑用だけど(“dogsbody job”というらしい)家族や患者さんと関われるのは楽しい。
日本語で患者さんに非難されると毎度個人的に受け取ってひどく傷ついていたのだが、今日は患者さんの文句にもそんなに心が乱されなくて、これが私の英語力の限界かもしれないと思った。その人はMFFD (medically fit for discharge)でリハビリだけが問題の人で、リハビリが思い通りに進んでいないことへの不満が医師への不満につながっていた。強い言葉で私を責めていたのだが(どちらかというと穏やかな口調だが内容はかなり激しい)、何というか感情を乱されない適切な距離感で謝ったり方針を示したり妥協案を提示したりできたと思う。また別の人だと違うように感じるかもしれないけれど、全然心乱されないことに少し驚いた。PLAB2で怒っている人への対応を練習した成果かもしれない?が、多分英語力の限界だと思う。泣いている人や声を荒げる人や激しく怒っている人には心乱されるけど、静かに激しく怒っている人には静かに対応できる。静かに激しく怒るところがなんというかイギリスのご高齢の紳士という感じがした。
私は実質はSHOだけれど正式にはFY2の立場なのに今日は病棟で私が一番上の立場で抗菌薬の変更や抗凝固薬の再開など色々決めないといけなくてちょっと戸惑った。事後報告としてコンサルタントに話して全部私が決めた通りの方針で良かったけれどまだ働き出して1ヶ月なのであまり責任は負いたくないなと思う。日本ではいつでもコンサルタントとは言わなくても後期研修医レベルのスタッフが病棟に常駐しているように思うが、イギリスは1-2年目の研修医だけということもざらにあるようだ。
日本ではHome Oxygen Therapy(HOT)と略すけど日本のHOTは英国ではもっと細かい呼び名にされていてメジャーなやつ(重度COPDで常に酸素を必要とするような場合)はLTOT(Long-Term Oxygen Therapy)と表記するみたいだ。もうLTOTで慣れたけど勤務最初の方に私が書いたカルテはHOTになっている気がする。
トルバプタンは薬価が高いから6時間ごとにNa値確認しないといけない&Do処方だめで毎日処方しないといけないらしい。NHSらしい。
私が日本で研修医だった頃は、8時間ごとをq8h、6時間ごとをq6hなどと表記していたが、この書き方はアメリカでしかしないんだろうか(pocket medicineで見た気がするので多分院内ルールではないと思う)?日本ではお馴染みの problem list #1, #2,… もイギリスでは①,②,…と書くしイギリスでは#はfractureを意味する。日本では“6T3x (6錠分3)”という表現を使っていたが、これもイギリスでは、“名前 1回分の分量 TDS” という感じで記載することに最近やっと慣れてきた。OD, BD, TDS, QDS, ON, PRN などもすらすら出てくるようになった。
以下は同僚に聞いたことだが、イギリスの脳外科医は狭き門らしい。たくさん査読論文があるとか有名な教授の推薦状があるとかいう場合には外国人でもtraining postに就くのは不可能じゃないけど大変難しく、基本的に地元の大学をでたような人が優先されるとのことだった。しかも8年のtrainingを終えてもconsultantのポストに空きがなくてそこでまた競争が生じるらしい。脳外科に関しては大学卒業の2年くらい前からCVを磨くなど、本当にそれ一筋みたいなストイックな人にしか選べない道らしい。日本でも仕事が好きなストイックな人しか脳外科医にはなれないと思うけれど、選択自体は卒後に検討をはじめた人にも広く門戸開放していると思うので(私の思い違いかもしれないが)、イギリスとの違いに驚いた。
またイギリスのGPはQOLがいいので外科や内科専攻医で疲れた人はGPコースに転職することも多いそうだ。10分で検査なしで決着とかadmin業が多いとかその辺が気にならなければ、work life balanceが素晴らしいしbank holidayは休みだし給与もいいのでおすすめで、仕事を楽しんでるGPもたくさんいると聞いた。(少し話は逸れるが、しかしながら、私のハウスメイトのナイジェリア人救急後期研修医は、GPコースから救急コースに転科した人で、GPはリスクが高すぎてやりたくないと言っていた。10分で検査なしで決着をつけるなど瞬時の判断が求められること・採血や画像検査をできないことがネックに感じるらしい。彼の友達は、胸部?腹部?大動脈瘤の切迫破裂を胃炎で返したそうで、翌日に患者さんが死亡したためGMCから尋問され免許の一時停止措置などを受けたそうで、それを聞いて検査に頼れる救急に転科したそう。)
アメリカのGPはイギリスのよりhecticとのこと。またアメリカの専門医は給与は高いけどQOLはイギリスに劣って、例えばイギリスの脳外科医はそこそこ自分の生活もあるけれどアメリカの脳外科医は病院に住む感じらしい。イギリスの専門医はtraining中は大変だけれどconsultantになってしまえばwork life balanceは非常に良いらしい。
これを教えてくれた同期は、interventional radiologyで専門医を取った後にカナダかアメリカかUAEへの移住も検討していると言っていた(オーストラリアは家族大好きな彼には遠い国なので、オーストラリアに行くくらいならカナダかアメリカにすると言っていた、イギリス人には珍しい)。UKの専門医は米国では使えないがそれ以外だと互換性のある国がたくさんあるのが魅力だと言っていた。UAEは税金がない(!)らしい。
私は独特のアクセントで話す。もう数ヶ月働いたらイギリスのアクセントをpick upできるかもしれないと期待していて、英語力が向上しそうなことも就職を楽しみにしていた理由の一つだが、10年以上イギリスにいるのに訛りが全然抜けないインド人のスタッフと会って、ことはそう簡単ではないかもしれないと少しがっかりしている。お年を召した患者さんにゆっくりarticulateする時は日常会話よりうんとイギリス英語らしいかなと自分では思っているけれど、思うままにバーっと話す時はもっと平坦で国籍不明(だけどrは日本語)の英語になる。せっかくイギリスに住んでいるので誰が聞いても聞き取りやすいように、或いは南イングランドの英語に近づけるように、地道に発音を練習しようと思う。
今週のBMJには働きながら母乳育児・搾乳してた先生たちの話が載っていた。ある日15分で退院書類作成と食事と搾乳をせねばならず手術室のコーヒールームでオペガウンの下で搾乳したけど誰も気が付かなかったのでそれ以来色々な公共の場(clinical governance meeting, multidisciplinary team meeting, handoverなど)で大胆に搾乳したという外科医の話が特にすごいと思った。私に出産・育児経験がないからかもしれないがこういう話を日本で見かけたことが一切ないので、一つのトピックとしてBMJに取り上げられていることに驚いた。
今日は病棟のラジオからU2が流れていた。日本にいた時からイギリスやアイルランドの音楽を好んできいていたので、好きだった(イギリスに来てからはあまり聴かなくなっていた…)音楽が日常的に耳に入る環境にいるのが嬉しい。
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