仕事が始まってからはとりとめのないことを勤務開始日からの日数と一緒にブログに書いている。いつか懐かしく思い出せる日が来るといい。
明日は初めての給料日だ。Twitterで見かける研修医の給与明細をみて戦々恐々としていたが、思ったより高かった。夜勤なしで年金や税金を引いて手取りで£2775、円安なので現在の日本円では45万円くらいだ。
来月以降のシフトを見ると、Self Development Time (自習の時間で法律で定められており、病院に来なくてもいいし監視もないが遊んでいないで勉強に使うことになっている)も合わせるとほとんどの週で週休2-4日もあるので、日本より労働環境が良い気がしてきた。夜勤は眠れないタイプの激務夜勤のようだが、3-4日連続夜勤の前後2日は必ず全休なのも日本と違っている。イギリスの研修医は“劣悪な”労働環境に対してindustrial action(ストライキのこと)を取ると言っているし皆強い不満を持っているのでそれを額面通りに受け取っていたが、日本と比べると労働環境は同じか少しいいのかもしれない。実際に夜勤を経験してみてからまたブログに書こうと思う(完全に意見を覆す可能性も十分にある)。
アイルランドの医学部出身の中華系マレーシア人が職場の同期に加わることになった。東アジア系の顔の人は話をするだけで癒されるので嬉しい。アイルランドの医学部はUKの医学部より制度や学費面で外国人が入学しやすいけれど、後期研修に進むとなると、どれだけ成績が良くてもアイルランド出身者が全員進路を決めた後でしか専門科を選べないそうで、外国人が競争率の高い科で研修するのは不可能なので皆初期研修前後のタイミングでUKに来るらしい。そういえばトリニダード出身の同期もアイルランド出身である。
彼女はstandalone FY2なのだが、使える制度やサポート体制などはlocally employed doctorの私と全く一緒なので、大事なのは雇用名ではなくてどこのtrustに雇われているかなのだなと思った。勤務初日はサポートがなく本当に辛かったのだが、それはtrustのせいというより特定のレジストラのせいで、仕事に慣れた今は私の勤務先は結構サポート体制が手厚いのだと知っているしそれをありがたく思っている。今は居心地よく働けているし、北海道に帰りたいとも思わない。
Ward 7にいた別の研修医も一度Ward 4に派遣されてからはこちらが気に入ってしまって、居座っている。「あっちのWardはすごくきついよね、常に競い合ってる感じ」と言っていた。私もおっとりした優しい研修医の多いWard 4に来てストレスが激減した。これからもずっとWard 4に居たいと思う。
カルテの解読はだいぶ楽になってきたけど(特に薬の名前は一旦覚えてしまうと大体読めるようになる)、やっぱり全然読めないことがあるので、手書き文字を活字にするアプリをダウンロードしてみた。でもAIを持ってしても読めなかったので、多分誰も読めないんだと思う(コンサルタントも時々読めないと言ってカルテをスキップしている)。
とある患者さんのHandover sheetに“allowed to have Guinness beer OD (=once daily)” (ギネスビール1日1回は許可)とあるのが気に入った。ギネスビールを含めて一応水分制限もあるようで、それもきちんと“fluid restriction including Guinness beer”と書いてある。
ホームレスの人をおうちによく泊めてあげているという人がCOPD急性増悪で入院したのだが、救急隊が撮影した自宅の写真のあまりのごみ屋敷ぶりに驚いた。自主退院したがっていたので研修医の私としては突然調整の仕事やアセスメント系の仕事が激増して大変だったのだが、生活ぶりや人柄がわかって印象深いケースで関われて良かったと思う。
患者さんや家族と話をするのも楽しい。英語で仕事をしているのが今も夢みたいに感じる。ある日の回診では病棟のラジオからオアシスが流れていて、ああ私は今十年来憧れていた場所で専門職に就いているのだなと昔を思い出して感慨深く思った。大学院生の時はメールを送る前に必ずGrammarlyを使うなど英語に気を遣っていたが、今は仕事で忙しいのでそうも言っていられずOutlookの自動校正や自分の頭だけを頼りにメールをしたりカルテを書いたりしていて、これだけ英語を使っているとあまりself-consciousになることもなくて英語も居心地が良い。やっぱりイギリス人だけの会話について行くのは大変だし、強いインド訛りの英語は聞き取るのが難しくてちょっと落ち込むけど、英語で困ってしまうことは想像していたほどにはなくて良かった。
2人目のdeath certificateはムスリムの女性に書いた。イスラームは土葬で、亡くなってから早ければ早いほど良いようで、出勤してすぐに証明書を発行した。
PLAB2予備校でムスリムの人たちと接してカルチャーショックが大きすぎて寝込んだ話をいつか書いたと思うが、もうなんとも思わなくなった。というか、イギリス育ちのムスリム、イギリス育ちだけど閉じた社会で育ったムスリム、親がムスリムだから一応ムスリムと思っているが全然religiousじゃない人、UKにきたばかりで本国の慣習を強く引きずっている人、息子についてUKに来たがムスリムコミュニティ外と関わりがなく英語も話せない人、UKにきて長いので普通に関わる分には宗教の違いを全く意識させない人、家族は全員ムスリムだが宗教的にちょっと迷っている人など、本当にバラエティに富んでいるので、イギリスにおけるムスリムは一言でこうだと言い表せず、結局は「同僚のXさん」「患者さんのYさん」というように個別に認識することになる。
オマーンをはじめ中東の国々では雨が降るとインフラが整っておらず洪水になるので休校になるらしい。今日は珍しく大雨だったのだが、症例発表を控えた同期が発表延期になればいいのにとぼやいていた。
最近はほぼヴィーガン生活をしている。朝時間がなくてサンドイッチを作れなかった日などは病院の売店やカフェテリアで出来合いものを買わないといけないのだが、オックスフォードと違ってヴィーガンのものはなかなかない(ベジタリアンのものは簡単に手に入る)。やっぱりオックスフォードは良い意味で特殊な街だったのだなと思う。牛乳は代替品で満足なのだが、卵と本物のチーズは時々とても食べたくなるので、完全なヴィーガンまではまだ時間がかかりそうだ。
ポートフォリオ用にreflectionの書き方を色々調べていたのだが、このサイトの一番初めにリンクされているPDFの内容は結構役に立った。イギリスに来たくて日本で自分でポートフォリオを作ろうと思っている人は参考にするといいかもしれない。
勤務最初の1週間とはうってかわって毎日定時上がりだし息抜きもできて充実しているので、イギリスで働ける幸せを噛み締めている。
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