今日は第14回目の勤務日だった。Ward4に移ってからは全ての仕事をつつがなくこなせていて、定時退勤できる日も増えてきた。1日に3-4件のTTO(GPへの退院時レター)を作ってしまうのも日常である。仲間とコンサルタントによってこんなに違うのかと驚いている。晩酌も毎日する必要を感じなくなったし、走ったり泳いだりと健康的なストレス解消を実践できている。当初は毎日のように北海道に帰りたいと思っていたが、この頃はそんな日もほとんどなくなった。
イギリスの病院は服装が本当に自由だなと思う。男性医師は襟付きシャツにズボンといういでたちが多いけれど、女性医師の服装は本当にバラエティに富んでいる。今日会ったHIVチームの医師はこれから登山するヒッピーみたいな格好をしていて群をぬいて素敵だった。Ward4の研修医仲間にはギャルがいて目の周りを真っ黒にする化粧と鼻ピアスをしている(鼻ピアスは一応外すようにと病院からの通達があるが、しているスタッフは結構いる)。タトゥもかなり普通で、タトゥをしている患者さんもスタッフも大勢いる。そんな中でも好きな格好をできないで地味な周りに溶け込む服装をする私は日本育ちだなあと思う。
患者リストが全部英語で目が滑るので、私は毎朝、患者さんの名前と病院ID(検査オーダーや結果確認に必須)にマーカーで線を引いている。部屋番号も間違えやすいので、自分で大きく手書きしている。それから院内靴も用意しているのだが、この辺の習慣を知っている同期が「日本人のorganisedのレベルは別次元だ」と驚いていた。院内靴は「文化的慣習?」と言われた。そうなのかもしれない。
書く仕事が多いので受験生の時以来(?)に右手の小指のペンだこが戻ってきた。が、Ward7の秘書業務と違ってWard4では患者さんや家族と接する機会が多く、診察や病状説明で毎回小さな達成感が得られる。他の研修医に医学的なことの解釈で頼られるのも嬉しい。
退院時レターを書くときに主語はWeで能動態で書いてたけど、イギリスで育った研修医の手紙はほとんど受動態で書かれていて、受動態でも良いのかと新たな発見があった。自分で担当していなかった患者さんの手紙は受動態の方が書きやすいので私もこれからは手紙に受動態を多用したい。
今日はPLAB2の過去問のようなケースに遭遇した。終末期の患者さんで、ご本人は英語が話せない。キーパーソンはケアに誇りを持っていて少しcontrollingな長男で、終末期であることを告げると大勢の家族が病室にやってきてみんなでお祈りをしていた。日本ではこんなに大勢の家族は見たことがないような気がする(PLAB2のケースではそこに楽器の演奏なんかが加わって同室患者から苦情がくるので、うまくその折り合いをつけるのが試験問題である)。
同期にオックスフォードの卒業生が結構いて、なんというか同じ文化圏の人という感じで、話すだけで安心感が得られる。
女性医師がたくさんいて驚く。本当にたくさんいる。女性医師は普通の存在で、女性医師に対する特定のステレオタイプはないように思われる。日本では戦うことが日常だったからこちらにきて戦わないことが日常になってアイデンティティが少し揺らいだ。英国に来てからもっと大きなアイデンティティのゆらぎもたくさん経験したけれど、環境改善でもアイデンティティが揺らぐのかと少し不思議な気持ちがする。
GMCはいろんな理由でたくさんの医師から嫌われている存在なのだが、NHSの医師からお金を巻き上げて存在しているGMCはスタッフへの福利厚生としてプライベートケアを提供しているというのが馬鹿げていて笑ってしまう。
仕事のしすぎで指がThinkPadのキーボードの配列に慣れてしまったので自分のMacbookを使うときにショートカットのボタンが違っていて少し戸惑う。
ICUから転棟してきた人のカルテは電子カルテを印刷したもので(どうもICUでは全て電子化されているらしい)、情報収集が簡単で感激した。やっぱり紙カルテはよくない。紙カルテ・処方のせいで2倍くらい情報収集に時間かかる気がする。印刷カルテはTakotsubo心筋症がTakutsobuになっていた。日本語に堪能な人なら絶対に間違わないけれど、日本語を知らない人にはこれはTrousseau徴候とかCaesarean sectionみたいな綴りの難しい単語なんだろう。
イギリスでは(私の病院では?)患者さん家族が火葬を希望する場合、火葬の書類をかいた医師に£82の臨時収入があるらしい。変な制度だ。私が診断書を書いた人は土葬だった。診断書には学位を書く欄があって、GMCに登録された通りに書かねばならないので、残念ながら私はIgakushiと書いた(日本の医学部出身者はみんなIgakushiである)。MBBSと比べて少し格好悪いと思う。
この辺がこの1週間の感想。とりあえず北海道に帰りたいと思わなくなったことと定時退勤してそれなりにストレスをコントロールできているのは大きな進歩だと思う。来週までにHorusの使い方を調べるのと、mandatory trainingを終了するのが今週の目標。
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